7)標準治療と陽子線治療
がんは細胞の突然変異と考えられています。年齢が高くなると、細胞の制御が効きにくくなり、がん細胞は勝手に増えてしまいます。原因は遺伝子の傷と言われており、そのうちに宿主まで殺してしまうのです。 それでは、現在の治療法にはどのようなものがあるのでしょうか。標準治療として第一に挙げられるのは外科的な手術です。第二の方法が化学療法で、いわゆる抗がん剤による治療法。第三の方法が放射線治療ということになります。
日本の現状は7から8割が外科的な治療であり、放射線治療は2から3割ですが、アメリカやヨーロッパで多いのは放射線治療で、がん治療の7から8割を占めています。けれども、そこで行われているのは日本のようなX線治療ではありません。虫眼鏡で光を集めるように、放射線を一点に集中させる先端機器が使われているのです。 こうした放射線治療のなかで、究極のものが”陽子線治療”です。
超一流の外科医のメスに匹敵する切れ味と表現されることが多いのですが、体にメスを入れることなく、がんの病巣だけを狙い撃ちし、周辺組織への副作用もありません。
通院で普段通りの生活をしながらがんを治せるのです。陽子線治療が”がん治療の理想形”と呼ばれる所以でもあります。
陽子線治療の治療手順 【 準 備 】
固定具作成
治療時に毎回同じ姿勢が保てるように体を固定するための固定具を作成します。
前立腺の場合、お腹周りを固定するシェルと、膝から踵までを固定する吸引式固定バックを使用します。
治療計画用のCT/MRI撮影
治療計画に使用する画像を撮影します。上記で作成した固定具を装着した状態で撮影を行います。 撮影した両者の画像を元に陽子線の治療計画が立てられます。
陽子線治療の治療手順 【 計 画 】
治療計画
治療計画装置で病巣の位置を確認し、最適な照射方法を検討します。
陽子線治療の治療手順 【 リハーサル 】
治療リハーサル
陽子線治療を行う前に、本番を想定したリハーサルを行います。ここでは患者さんに実際に治療台に寝てもらい、本番の治療に向けた最終確認を行います。主に装置、寝台等の動作、干渉確認および治療計画の確認を行います。
陽子線治療の治療手順 【 治 療 】
位置決めX線撮影
正面と側面の2方向からX線を撮影します。撮影した画像と治療計画に使用した画像を比較し、撮影した画像が治療計画画像と同じ位置にくるように寝台を移動させます。
寝台を移動したらX線で画像を確認し、両者が重なり合うまで繰り返し行います。
陽子線の照射
位置合わせが終了した時点で陽子線治療の準備が完了になります。 患者さんに治療の準備が整ったことを促し、陽子線を照射します。前立腺の場合、照射時間は3~5分程度で終了します。
陽子線治療の治療手順 【 確 認 】
PET-CT撮影
治療後にPET-CT装置で陽子線が照射された部分を確認し、陽子線が目的病巣に対して治療計画通りに照射されていることを確認します。