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ミズキ：「中庭に行こう。冬なら落ち葉とかもないだろうし、一番楽そうだ」

ナツメ：「一番大変だよ！　でもまぁ、一番大変だからさっさと終わらせちゃおっか」

ということで、朝食を食べ終えてすぐ、中庭へ向かった。

　王宮の中庭は専属の庭師によって整えられており、枝一本の乱れも見られない。

　人の手に整えられることで生まれる違和感も覚えられなかった。

　貧民街で暮らしていたときに剪定のアルバイトをしたことがあるが、草木を整えるだけの簡単な仕事と甘く見て大失敗したことがある。 ミズキ：（やっぱりバイトがやるよりずっと綺麗だなー………）

　一介のアルバイトが専門職に勝てるわけがない。

　わかりきっていたものの、自然とそう思った。

ミズキ：（………かなり広いな）

　見渡す限りの芝生と、レンガ造りの花壇。

　花壇には色とりどりの薔薇が咲いていて、その合間を蝶や蜂が飛び交っている。

　しかし庭師が剪定した際に出た葉っぱや枝がそのまま放置されていて、景観を台無しにしていた。

　それらを箒で集めながら、ナツメがため息を吐く。 ナツメ：「サザンカじいさんってばまた散らかしていってる………」

ミズキ：「いいのか、そんな庭師で」

　ミズキも箒を持って参戦した。

　芝生に絡んだ葉っぱが上手くちりとりに入らず、力いっぱい掃くと芝生まで抜けてしまう。

　四苦八苦しているうちに、ちりとりには芝生もいくらか入っていた。

ナツメ：「腕は国一番だからね。若いときは他の国の王宮にも出張してたらしいし」

ミズキ：「それはこの庭を見てればわかるけど………」
ナツメ：「まぁもう八十歳だし、それだけ生きてればいい加減にはなるんじゃないかな。メイド長も頭が上がらないんだ」

ミズキ：「メイド長に勝てる人がいるんだな」

ナツメ：「唯一だよ」

ミズキ：「あ、向こう側にも残ってる………」

ナツメ：「これは大変なことになってるね………じゃあミズキくんはそっち、僕はあっちを片付けてくる」

ミズキ：「わかった」

　ナツメが噴水のほうへ駆けていくのを見届けてから、ミズキは花壇のほうへと歩き出す。