事例を知って防ぐ「子どもの事故」-3.11に学ぶ
太田 由紀枝、稲坂 恵(Safety Kids いずみ)
1 目的
日本における子どもの死亡原因は「不慮の事故」がトップですが、社会の認知度が低く、同じような事故が繰り返し起こっています。Safety Kids いずみはこの「不慮の事故」の発生数を減らすことを目的に活動している非営利団体です。Safety Kids いずみでは過去5年間「子どもの事故予防講座」を開催してきました。
Ohta Yukie, Inazaka Megumi (Safety Kids Izumi)
1. Objective
The commonest death for children in Japan is freak accident. This fact is often socially ignored and similar tragedy occurs repeatedly. Safety Kids Izumi is a non-profitable organization whose objective is to decrease the number of freak accidents. Safety Kids Izumi has held workshops for child accident prevention in the past 5 years.
子育て中の保護者が「ヒヤッ」とした事例を「Share Your Story」と名付けて聞き取り、その結果を「カレンダー」と「かみしばい」にまとめましたので報告します。
また、東日本大震災で「釜石の奇跡」と呼ばれた徹底的な防災教育の詳細を調査し、事故予防の分野で生かすことも目的です。
2 方法
(1)日本における子どもの傷害による死亡率が世界の中でどの位かを調べました。
(2)14歳以下の子どもについて、人口動態統計から傷害による死亡実態を年齢群別にまとめました。
(3)事故予防講座において参加者から聞き取った内容で啓発品を作成しました。
(4)3.11の東日本大震災の際に防災教育を受けた子どもたちがその教育を実践して助かっていますので、その詳細を調査しました。
3 結果
(1)日本の子どもの傷害による死亡率(人口10万人対)については、0歳と1~4歳で世界より悪いことがわかりました。
(2)日本の子どもの不慮の事故による死因順位は、0歳で4位、1~4歳で2位、5~9歳と10~14歳は共に1位でした。人口10万人対の死亡率では、0歳で10.5,1~4歳で3.6,5~9歳で2.3,10~14歳で2.1でした。事故種別は、0歳は窒息が多く、主に口・鼻を覆われて息が出来ない事態で、1~4歳は溺れが多く、主に浴槽内の溺れでした。
(3)ヒアリングで得られた事例は、窒息・転落・火傷・溺れ・道路への飛び出しなどでした。
(4)東日本大震災で、自分自身の命と地域住民の命を守った子どもたちは、《1》想定を信じない《2》ベストを尽くす《3》率先避難者になる、という3原則を実践していました。これは徹底した防災教育の結果です。
4 考察
子どもの事故は家庭内で発生することが多いですが、報告システムがない日本では事故事例が周知されず問題が認識されていません。それが事故発生率の高さの理由と言えます。「ヒヤッ」とした事例を身近なところで登録し、共有する仕組みが必要です。
日本独特の課題として浴槽溺れがあります。災害時に水を確保するため浴槽に水をためることが推奨されていますが、乳幼児のいる家庭では浴室のドアに鍵をかける対策が必要です。また、「釜石の奇跡」と言われる防災教育からは、子ども自身が身を守る教育の必要性を痛感しました。5才以上の子どもには、自ら身を守る対策の指導が重要であると考えています。
最後に、SAFE KIDS JAPANの復活を願い、Safey Kids いずみも、その復活と実践に関わりたいと希望しています。