打たれた頬に触れると、ハッキリとした熱を帯びていた。
先ほどまで水拭きをしていた自分の手が酷く有難く感じる。
ミズキ:「………すみませんでした」
マユミ:「わかればよろしい」
ふん、と鼻を鳴らすマユミ。
ナツメがわかりやすくマユミを睨んでいた。もう嫌われているから恐れることはないようだ。
マユミ:「………そうですね。では、今日中に王宮中の窓を拭き掃除しなさい」
ナツメ:「今日中?!」
ミズキの代わりに、ナツメが驚く。
When I touch the cheek that was slapped with my hand, I feel an obvious heat.
I was never more thankful for this hand I was earlier using for wet cleaning.
Mizuki : "..... I am truly sorry"
Mayumi : "Never mind if you are sorry"
Humph, Mayumi grunts.
Natsume clearly stares at Mayumi. He is not afraid of Mayumi because he is not her favorite anyway.
Mayumi : "....... Well, then. Clean all the windows in the royal castle by the end of today"
Natsume : "Wha?! by the end of the day?!"
Natsume shows an amazement on behalf of Mizuki.
この後まだ中庭も掃除をしなければならず、それに加えて王宮中の窓の拭き掃除。
終わるのはいつになるのか、想像もつかなかった。
マユミ:「何も王様の部屋に入っていけと言っているのではありませんよ。下男が入れない部屋もたくさんありますからね。廊下だけでいいわ」
ナツメ:「そんな無茶な………!」
ミズキ:「わかりました。やっておきます」
ナツメ:「ミズキくん?!」
ナツメが素っ頓狂な声を上げる。
確かに無茶な命令なのかもしれないが、マユミには逆らうなと言われている。
ここで突っぱねたら、明日にはもっと酷い内容を提示されるかもしれないのだ。
まだ簡単なうちに、せめて嫌われないようにしておこう。
そういう考えだった。
ミズキの返答が意外だったのか、マユミは少し驚いたように口を開く。
だが、その感情を見せまいとしたのか、マユミはふんと鼻を鳴らして去っていった。
ナツメ:「僕が手伝っても、今日中に廊下の窓を全部なんて無理だよ」
ミズキ:「今日中ってことは、俺が寝なければ明日の一時は今日の二十五時だろ? なんとかなるって」
ナツメ:「て、徹夜すること前提で返事をしたの?! しかも一人でやるつもりで!」
ミズキ:「徹夜する体力もないオバサンはもう引退しろって意味を込めて、やり遂げてみせるよ」
それは強がりでも何でもない、自信があるから言えることだった。
徹夜なんてミズキは今まで何度もしてきたのだ。大半が「眠ったら死ぬ」という状況下ではあったが。
貧民街の者たちなら、このくらい経験している。
ミズキ:「これくらい、俺一人でも大丈夫だよ」
ミズキは満面の笑みで、心配そうなナツメに言った。
ミズキ:「ほら、さっさと中庭の掃除をしよう!」
ナツメ:「あ、う、うん! って、ちょっと! 中庭はこっち!」
ミズキ:「あ、ごめん」
Mizuki: This isn't much, I can do it by myself.
Mizuki said to anxious looking Natsume, with his face beaming with smiles.
Mizuki: Hey, let's hurry and clean up the patio!
Natsume: Uh, sure! But wait! Patio is this way!
Mizuk: Oh, sorry.