コーポレートベンチャーキャピタルの時代
ここ1、2年で起こったスタートアップ界隈のトピックスのひとつに「コーポレート系ベンチャーキャピタル(以下、CVC)」の勃興がある。
2011年の年末には日本のソーシャルゲーム大手2社、GREEとKlabが相次いでGREE Ventures、Klab Venturesを設立、2012年2月にはスタートアップ向けインキュベーションプログラム「KDDI ∞ Labo」を運営する日本の携帯キャリア大手KDDIが50億円規模のファンド「KOIF」を立上げた。
In February 2012, Japanese major mobile phone carrier KDDI which operates 'KDDI ∞ Labo' an incubator program for startups founded 5 billion yen fund 'KOIF'.
同年9月には「爆速」キャッチフレーズと共に快進撃を続けるヤフーが10億円規模の「YJキャピタル」を発表、その翌月には携帯キャリア最大手のドコモが100億円規模となる「ドコモ・イノベーションファンド」の計画を公開し、2013年に入って早々の1月、今度は大手テレビ局フジ・メディア・ホールディングスが15億円規模のファンドを有する「フジ・スタートアップ・ベンチャーズ」を設立している。(リンク先はPDF)
In the following month, the biggest mobile phone carrier Docomo released its 10 billion yen scale 'Docomo Innovation Fund'. On January 2013, at the beginnning of this year, a major TV station Fuji media holdings established, in turn, 'Fuji Startup Ventures Inc.' which has 1.5 billion funds. (linked URL:PDF)
比較的小規模のCVCも含めて考えれば、わずか1年という期間で数百億円規模のファンドが組成されたことになる。その方向性もGREE VenturesのようにCVCに見えて実態は純粋な投資ファンドを指向するという例もあるが、基本的には各社事業会社とのシナジーを前提にしたものが多い。スタートアップにとって、大企業との連携と資金調達の両方を一挙に手にする選択肢が急激に増えていることはやはりチャンスと捉えるべきだろう。
1月31日に私はB Dash Venturesの新年会に参加したのだが、そこでちょっとしたサプライズがあった。フジテレビジョン常務取締役で、同時にフジ・スタートアップ・ベンチャーズ代表取締役社長の亀山千広氏が、設立したばかりのファンドについて壇上で話をしていたからだ。(「踊る大捜査線」のプロデューサーなどで著名な人物だったものだから、ミーハー心も手伝ってドキドキしてしまった)。
話題は既に発表されているものだったけれど、こういった機会に足を向けてくれるのだとそちらの方に関心があった。(後で関係者に話を聞くとレア・ケースだったそうだが)。
また、この日はもう一つ、まだその多くがベールに包まれているドコモのインキュベーションプログラム「ドコモ・イノベーションビレッジ」とそのファンド「ドコモ・イノベーションファンド」についても触れられる場面があった。
On that day, there was also an opportunity in which they talked about Docomo's incubation program 'Docomo innovation village', many of which has still been veiled and about its fund 'Docomo Innovation fund'
壇上に上がったのはプロジェクトを推進するNTTドコモR&D戦略投資担当の秋元信行氏で、残念ながら「詳細についてはまだ明らかにできない」と、2012年10月の第2四半期決算発表で話された以上のことはまだ公開されなかったが、中心となる人物と出会えたのは収穫だった。ちなみに秋元氏はEvernoteへの投資などで知られるドコモキャピタルでCEOを務めた人物だ。
CVCは純粋な投資ファンドと違って事業会社という「色」が付く分、選択肢に入りづらいと考える人もいるかもしれない。しかし、各社の取組みをみると、例えば通信キャリアであればスマートフォンアプリのマーケティング支援や共同営業・販売などはスタートアップにとって大きいメリットになり得る。
通常、こういった事業提携を小さい側から持ち込んでもなかなか通らないものだ。CVC経由であれば(もちろんハードルは沢山存在するが)資金調達に加えてこのような恩恵にあずかれる可能性も高い。
Normally, it is difficult to reach an agreement of a business partnership when a smaller company propose, but if you go through CVC(of course, there are many hurdles in front of you), there is a high possibility to have such a benefit along with fund-raising.
昨年立上がったCVCが活発なスタートアップ向け投資を実施し、例えば「KDDI ∞ Labo」の第一期生であるソーシャルランチは2012年の年末にイグジットを果たすなど、結果も出つつある状況だ。今年から来年にかけてこのような結果はさらに出てくるだろう。CVCを支援先の選択肢とするか、2010年に始まったシードアクセラレーター活性化と似たトレンドとして注目したい。